地球軍が木星トカゲに負けて、訳のわからない人に助けられてから一年。
あんまりにもふがいない地球軍を見てついに民間企業のネルガルが戦艦を飛ばしたわけ。

でもねえ。
理由
 

鋼の箱の中におさまり、立ち並ぶエステバリスとソラヌム。それらが立ち並び、整備班が驚喜として機体の整備をしている。
その格納庫では相対するアキトとゴートが話をしていたいた。
「テンカワ、ご苦労だった。」
その言葉にやいして手を振るアキト。
「いえいえ、俺も給料分の仕事はしておきたいですからね。」
「そう言ってもらえるとありがたい。」

話をしている最中色々な音が聞こえてくる。耳障りな歌、ウリバタケの整備員への指示その音によってさえぎられる会話。
「オイ!!うるさいぞ。」
そのゴートの声に静かになる格納庫。しかしその中には違うものも居た。
赤いパイロットの制服を着た男ヤマダジロウが言う。
「何でソイツだけがお咎め無しなんですか?勝手に人の見せ場を奪いやがって。」

「勝手に骨を折ったくせに。」
ゴートの冷たい言葉にたじろぐヤマダ。
「大体なんでソイツは制服が黒で機体も特別なんですか?」
自分とは又違う特別の格好。それがヤマダ自身許せなかった。自分が一番、自分がケンだ。その考えを彼はもっていた。
「あれは我々が用意したものではない。」
ゴートの次にアキトも話し始める。
「はい、社のほうでエステバリスの機体をを元にして設計、チューニング、改造をしたものですから。」

「そうか。」
それを聞いて引き下がるヤマダ。彼自身機体がそのように作られているのなら自分専用で機体があることは無い事などはわかった。
「では、これからも頼むぞ。」
ゴートはアキトの肩をたたくと去っていった。
「ハイ。」

アキト、ラピスの部屋
滴り落ちる水滴、過去にきて方もわずかに残っていた以前の傷の上をなぞるかのようにそれは床へと落ちてゆく。
シャワー室でシャワーを浴びるアキト。コックを回しシャワーを止め腰にタオルを巻いて外に出るアキト。
その彼にバスタオルが渡された。
「はい、アキト。」
そこにいたのはルリと似たようなデザインの制服を着たラピス。
違うのはベストの色が黒で、ネルガルのロゴマークが無く、スカートが膝下10センチでスリットが腿の付け根の下20センチにあり、
生足をアキト以外には見られたくないラピスは更に黒のニーソックスやタイツを着用している。

「ああ、ありがとうラピス。だけど着替えを見られるのは気分が良くないな。」
「あっ!!ごめんなさい。」

赤くなってしまったラピスがバスルームから出て行くのを確認するとそのままアキトは制服に着替える。
着替え終わると通路を歩き始める。そのアキトの後にはラピスも着いていた。
ブリッジに集まる主要メンバー。その中でプロスは語り始めた。

「今までナデシコの目的地を明らかにしなかったのは妨害者の目をあざめく必要があったためです。
ネルガルが独自に機動戦艦を建造したのには理由が有ります。
以後ナデシコはスキャパレリプロジェクトの一端を担い、軍とは別行動を取ります。」

フクベが一歩出て言う。目的地が自分にとって因縁のある場所であり何者かに助けられる
ことによって自分が英雄にされてしまった場所でもあるから。そして、彼は意を決していう。
「我々の目的居は火星だ!!」
その事を聞いてプロスによってくるジュン。
「では現在地球が抱えて居る侵略は見過ごすと言うのですか?」

実際地球にもチューリップは落ちてきて現在宇宙連合軍は月と火星の中間点にて交戦して、 最近になって負けてしまい地球の占めているのは月まで後退しているのである。 「多くの地球人が火星や月に殖民してゆきました。
しかし連合軍は火星の人々を出来るだけ救い、地球に戻ると共に残った人々を見捨て地球にのみ防衛線を引きました。
では、火星に残された人々と資源は一体どうなったのでしょうか?」
その問い掛けるかのような言葉にオペレーター席に座っていたルリがいう。
「どうせ死んでんでしょ?」

肩をすくめるプロス。
「判りません。しかし確かめる価値は・・」
そういったプロスの前ウインドウが開かれた。そのウインドウに移ったムネタケが言う。
「ないわね。そんなの。」
その言葉と同時に格納庫、ブリッジ、食堂などのナデシコのあらゆる場所に軍人が銃を構えて押し入った。

「ムネタケ、血迷ったか!!」
ブリッジの上部に居るムネタケにフクベが言う。
「提督、この艦を頂くわ。」
ブリッジの一箇所に集められて黙っていたゴートが口を開く。
「その数で何を出来る。」
「判ったぞ。お前ら木星のスパイだな。」
勢いよく言ったヤマダに銃が突きつけられる。熱血男のヤマダも行動を停止した。
「勘違いしないで。ほら、きたわよ。」
ムネタケがそう言って海に視線を向けた。すると海中が盛り上がり、連合宇宙軍の戦艦が浮上してきた。
それと同時にナデシコに通信ウインドウが開かれる。

【こちらは連合宇宙軍第三艦隊提督、ミスマルである。】
黒髪にカイゼル髭の男がそのウインドウには映っていた。
「お父様!?」
そのユリカの言葉に驚いてユリカを振り返るミナト。
「え!?」
「お父様、これはどう言うことですの?」
ユリカの姿を確認したせいか今までの威厳は消え、親ばかのミスマルコウイチロウが現れた。
【おおユリカ、元気か?】
「はい。」
【許してくれユリカ。これも任務なんだ。パパもつらいんだよ。】その親子の会話に割ってはいるプロスペクター。

「困りましたな。連合軍とはお話がついているはずなのですが、ナデシコはネルガルが私的に使用すると。」
【今我々に必要なのはトカゲどもと戦う兵器が必要なのだ。それをみすみす民間なんかに。】
それを聞いたプロスの眼鏡が怪しく輝いた。ごますりの手をしながらプロスは言う。
「いや、ミスマル提督、判りやすい。じゃあ交渉ですな。そちらに参ります。」
「判った。しかし艦長と作動キーはこちらで預かろう!!」
「え?え?」
マシンガンを構えた軍人にはさまれて戸惑うユリカ。

「艦長、やつらの指示に従うつもりか?」
「ユリカ、無ミスマル提督に従ったほうがいい。」
「我々は軍人ではない。従う必要はない。」
ヤマダ、ジュン、フクベの声があがり、彼女に決定を下させようとする。そして、コウイチロウもその中での例外ではなかった。
【フクベさん、これ以上生き恥をさらすつもりですか?ユリカ、私が間違ったことを行ったことはないだろう。】
その言葉に肩をすくめるフクベ。フクベ自身は地球では英雄扱いになっているが軍部では未確認の戦力に助けられ、
それを利用して人々を助けたフクベを腰抜けの老人などとして見ているのだ。

艦長席の前でうなだれるユリカ。そして、彼女はパネルを操作し始めた。その後の隔壁が不意に開かれた。
そのエレベーターに向かって一斉に銃が向けられるしかし、そのエレーベーターには一人の少女が乗っていた。
「あっ、すみません。間違えました。」
そう桃色の髪を持つ少女、ラピス・ラズリである。
そのラピスに対してユリカを囲んでいた兵士が言う。
「まあいい、エレベーターから出ろ。」
指示に従ってエレベーターを出るラピス。
「本当にすみません。」

ニコッと笑いながらラピスはいきなりスカートのスリットの部分の別れ目に手を掛けた。
次の瞬間銃声と共に、その男は倒れた。
「本当にすみませんね。」
ラピスの手にもたれていたのは一丁の銃だった。
「それとご心配なく。これは麻酔銃ですから。」
普通にそのことを言うラピスを見てその場に居た全員が冷や汗をかいた。

「きさま!!」
一時的に固まってしまった軍人がラピスに銃を向ける。しかしそれは一閃によってさえぎられた。
「俺の大事なラピスに傷をつけてもらっては困るな。」
構えていた銃が落ちる。
手がしびれるような痛みを覚え、そして声の主を探そうと首をひねろうとした彼の首に大きいサバイバルナイフの刃が当てられる。
「手元が狂わないようにしてますが、早く武器を捨ててもらえますか?手元が狂いそうです。」
にこやかに言いながらアキトは空いた片手でサングラスを押し上げる。それは冷酷な殺人貴にも見える優雅な仕草にも見えた。

「む・・」
軍人はその冷酷な言葉と、尋常ではない殺気を感じ、銃を下ろした。 
【何者だ貴様】
アキトは自分の前に表示された大きなウインドウに映るコウイチロウに話す。
「おやおや、人の名前を聞くにはまずは自分から、というのを知りませんか?」
その言葉を聞いておほんと態とらしい咳払いの後声を発した。
「む、それでは改めて言おう。ミスマルコウイチロウだ。」

「テンカワアキトです。両親が生前のお世話になりました。」
【テンカワ?】
「火星でお隣だったテンカワです。」
「おお、そうだったな。」
「それに見送りにはラピスも一緒に来ていましたよ。」
そう言ってラピスの髪を梳かす。
ラピスはその行動をうれしそうに受ける。

【テンカワの息子のアキトくんか。】
それと同時にアキトのことに気が付いたユリカも寄って来る。
「アキトアキト!!アキトだったのね」
近寄るユリカをラピス牽引して口元をタオルで結ぶ。
「やっと思い出していただけたようでうれしいです。それでは話をしていいですか?」

髭を整えながら答えるコウイチロウ。【まあ、良いだろう。】
「見送りでのあと空港でのクーデターが起こったのは知ってますよね。」
戸惑いを見せながら答えるコウイチロウ。
【ま、まあな。】
「そこで父さんと母さんが殺されたんです。」
【殺された?それは穏やかではないな。】
「え〜ホント!!」
タオルを外して驚きながら寄って来るユリカに対してラピスは髪を梳かれながら麻酔銃を発射。
すぐにユリカは倒れるがいつのまにか来ていたジュンが支える。
「そこでミスマル提督が何かを知らないかとお尋ねしたいのですが。」
【すまんなアキトくん。わしもそれについては知らない。】
「そうですか。それは残念です。それとこのことは俺の提出したレポートによって後々出版すると思います。
それからの地球連合軍に対しての人々の対応は面白くなりそうですね。」

怪しく口をゆがめながら言うアキトの行動にうろたえるコウイチロウ。
【なんだねそれは??】
「俺はノウンの社員でしてね。ナデシコに乗ったのも会社のほうで始めての相転移エンジン搭載の
戦艦についてレポートを出せと。そのナデシコに対しての海賊まがいの行動。ナデシコの動作作動キーの要求。
おまけの作動キーが無いと言うことはナデシコは完全に無防備となってしまいます。
このご時世で地球連合軍が木星トカゲから守りきれるとは思えませんが。」

そう言われたコウイチロウも気づく。今の地球連合軍は唯でさえ市民から批判を受けているのだ。
ここで更に文書系の本、情報でこういった揉め事を市民に知られたらそれこそ非難を受けることは必死である。
更にアキトの言うとおり現在の連合宇宙軍は木星トカゲに負けているのだ。

【それは勘弁してもらいたいな。良かろう。動作作動キーはいいが、クルーは食堂で、艦長の身柄はこちらで預かる。】
その話に入ってきたプロスペクター。
「テンカワさん、お話の途中すみません。あちらもこれで良いようなので、我々は交渉のほうをするので行ってきます。
あと、ラピスさんの麻酔銃とアキトさんのナイフに関しては後でしっかりと話してもらいますからね。」
頭を下げるアキト。
「かまいませんよ。まあ、こういうものは自衛のためと思ってくれるとうれしいのですが。」
そう言って今まで片手で持っていたナイフを鞘に収める。

「いえいえ、訳があるなら良いですよ。さあ艦長そんなところで寝てないで行きますよ。」
ずるずるとユリカを引きずりながらプロスペクターとジュンはトビウメに向かった。
「しばらくはプロスさんも帰ってこないだろう。それに食堂に行かなければならないから今のうちに腹ごしらえでも行くか。」
それに頷くラピス。既に麻酔銃はスカートの中に入っている。
「はい、アキト。」
「じゃあ行こう。」
そう言ってアキトは下へ飛び降りてルリを抱き上げて言う。俗に言うお姫様抱っこである。
「何をするんです?テンカワさん。」

ルリちゃんはいつもジャンクフードを食べているからね。ちゃんとしたご飯を食べようね。」
そのアキトに対して冷静に話すルリ。
「少女を物みたいに扱うのは感心しません。」
「まあ気にしない気にしない。」
そういったアキトはブリッジの出口へ向かった。
「ミナトさんも一緒にどうです?」
ラピスはミナトのそばに行きミナトを誘った。
「まあ、良いでしょ。じゃあ行きましょう。」
「はい。」そう言ってラピスとミナトも食堂へ向かった。

「私も、行こうかな?」
「オッシャー!!燃えてきたぜ。」
残された2人も食堂に向かった。
残されたのは麻酔銃で倒れた軍人と呆然としているムネタケだけであった。


ナデシコ食堂
そこにはナデシコのクルーが集まっていた。ブリッジは無事だったが未だに命令に従っていた軍人がいたからだ。
アキトたちもブリッジから出てすぐさまここにつれておられたのである。しかし武器はしっかりと所持している。
「ホウメイさん、火星丼とチキンライスをお願いします。」
「私も火星丼。」と、ラピス
「じゃあ、私はBランチ。」と、ミナト。
「はいよ。」カウンターに座る4人。
「テンカワさん、少女をあのように連れてくるのは感心しません。」
プンスカといった感情は出さずに淡々と言うルリにアキトは答える。
「そんなに怒らない怒らない。それにラピスと最初にあったときはあんなふうに扱っていたよ。
まあその場の状況のせいもあったけどね。」
苦笑しながら言うアキトを見上げるルリ。
「はあ、それで今まで気にしていたんですが、ラピスさんはマシンチャイルドなんですか。」

「そうですよ。」ルリとアキトの間に入ってくるラピス。
「でも私がはじめての成功例だと聞いています。」
「まあ、私の場合はアキトに出会って色々あったからそう言うデータがあるのかすら怪しいの。だから気にしないでほしいな。」
「はあ。」
ラピスに明るく言われてしまい。ルリは曖昧な返事しかすることが出来なかった。  
「頂きます。」一同が食事をし始める。

円卓の上に並べられたケーキを前にしてミスマル親子は話していた。
「ジュン君たち遅いな。」
「まあ、落ち着きなさい。それよりユリカ、やつれたんじゃないか?」
「お別れしてまだ2日ですわ。お父様。」
「まあ、それはそれとしてほらユリカ、ユリカの好きなカバヤのケーキだ。
ショート、レアチーズにチョコ、いっぱいいっぱいたーんとお食べ。」
「はい。お父様。」
ケーキにかぶりつくユリカであった。

「じあゃいいこと、ここでおとなしくしてて頂戴。」
復活したムネタケはそう言って食堂から出て行った。食堂の隅で肩を落とすウリバタケ。
「自由の夢は、一日にしてならず、か・・」
その彼の後ろにヤマダが松葉杖をつきながらやってきた。
「諦めるな、希望はすぐそこにある。みんなも諦めるな。」
昼食を取っているミナト達のとなりにメグミが座る。

「なんか がっかり。戦艦に来たらかっこいい人たくさんいると思ったのに変な人ばっかり、
テンカワさんが一番ましかと思ったらあんなことするし、それにあのネルガルの髭眼鏡の人大丈夫かな?」
「そんなこと言わないの。人は見かけによらないってね。」
ミナトはそう言って微笑んだ。
「なんだなんだみんな元気出せよ、俺が取って置きの元気の出るビデオを見せてやるぜ!!」

そう言って山田は自らの手の内にあった牛乳の紙パックを握りつぶした。中から残った牛乳が飛び出る。
汚くなるんだからこういうことは止めてほしいものである。山田は自分のポーチからビデオディスクを取り出した。

「おおおーー」周りから歓声が上がる。デッキとディスクウを前にしてウリバタケが調整をする。
「すんげー旧式のビデオだからさ、今のテレビに映すの面倒なんだよな。おーし、出来たぞ。」
「おーけーディスク、インスタート。スイッチオン。」
暗くなった食堂のスクリーンにそれは映し出された。
昼食を食べ終わった4人もスクリーンに振り返る。
そのスクリーンに現れたのは・・・・・
大空の太陽に向かって拳を振り上げる3人。どーんと現れるロボット、ゲキガンガー。
その瞬間、食堂は凍りついた。ルリもほうけてしまっている。
「あ・」
「何だこれは?」
頬を赤くして鼻息を荒げながら言う山田。
「幻の傑作、ゲキガンガー3いや〜、全39話燃え燃えっす。」
「しかし、オープニングが違うようですが・・・」そう言う山田後にアキトが立つ。

「あっ!!判る!!オープニングは3話から本当のになるんだよな。」嬉々としてヤマダはアキトによってきた。
「だからこそお前もロボットに乗るためにナデシコに乗ったんだよな。」ふるふると首を振るアキト。
「違いますよ。」
「なんだと!!コラ!!」
「俺は会社のほうの意向できているから。それにロボットは私のほうで既に用意されていたものですから。」
「ふん!!いい気なもんだなノウンの社員は。」
「おい、杖忘れてるぞ。」そういわれてヤマダはよろける。
「まあ、そこが社のいいところだから。」アキトは苦笑して見せた。
『無敵、ゲキガンガー発進。』
「おおーーー」山田はスクリーンに開き直った。「バカ。」とつぶやくルリとラピス、アキトであった。

「ゲキガンパンチ、ゲキガンカッター、ゲキガンビーム!!」技を出すゲキガンガー。
「地球の自然を、」「緑の地球を!!」「俺達が、守る!!」3つに分かれたコックピットで叫ぶ天空ケン、海燕ジョー、大地アキラ。

ビールを啜っていたウリバタケが言う。
「しかし暑苦しいな。これは、」
腕を組みながら言うゴート。
「武器の名前を叫ぶのは音声入力なのか?」
その2人の言葉に反応してヤマダはスクリーンを後にして語り始める。
「違う!!違うんだよ。これが熱血なんだ。魂の迸りなんだよ!」
ヤマダから何かのきらめきがはじけ飛ぶ。
その声に驚いて寝ていたフクベが目を覚ます。
「むう。」
「みんなー。これ見て燃えないのか?、奪われた秘密基地、軍部の陰謀、
残された子供達で打開して鼻を明かしてやろうとは思わないのか!!」
「誰だよ、子供って。」
そのときナデシコを振動が襲った。
「ルリちゃん、状況は?」ルリに振り返るアキト。

「オモイカネ、ウインドウに表示して。」
ルリの前に銅鐸に思兼と書かれたオモイカネのデフォルトイメージが描かれた大きなウインドウが開かれた。
「現在海底からチューリップが浮上中。既にクロッカスとパンジーがチューリップに吸い寄せられている。」
ラピスがルリの後を引き継いで報告する。そのことに反応するゴート。
「チューリップはエネルギー反応が高いものを標的とする。」
「今のナデシコは相転移エンジンが作動しているとはいえ、事実上休止しているから良いですけど、最終的には・・・・」

ゴートが言う。
「間違いなく標的にされるな。」「はい。」

アキトはドアを開け、後ろから鞘で警備をしていた軍人を倒した。アキトは振り返ると言葉をつむいだ。
「現在連合艦隊はチューリップに襲撃されている。しかし艦隊が負けるのは時間の問題だ。ならば、ナデシコが立ち上がろう!!」
そのアキトの言葉を固唾を飲んで聞いていたクルーが一斉に頷いた。
「さあ、立ち上がろう!!!」
「おおおおおおお!!」反乱の開始である。


隔壁が開かれ、プロスペクターと将校たちが現れる。
「お待たせ。」
「結論は出たかね。」
「はい。色々協議致しましてナデシコはあくまでわが社の私有物でありそのことで制限受ける必要なし。」
プロスが言った後、トビウメに警報が響き渡った。
ブリッジに入室するコウイチロウたち、ウインドウに映るのは浮上して空へと向かって飛び立つ護衛艦クロッカスとパンジー。
「チューリップ、護衛艦クロッカスとパンジーを吸い込んでいます。」
「やつめ、生きておったか。」
必死に逃亡をしていた2隻を応用にして海面からチューリップが現れた。チューリップは大きく花びらのように開き、
ゲートを造る。そのゲートに吸い込まれ。クロッカスとパンジーは消えた。

「チューリップ、進路をナデシコに変えました。」
「ナデシコの発進準備、さあユリカ今から我々の指示に・・・ってあれ?ゆりかは何処だ?」
うろたえて周りを見渡すコウイチロウの前にウインドウが開かれる。
【ここですわ。お父様。】
「ユリカ、何処に行くつもりだ?」
【ナデシコです。】  
「ハイ皆さん、下がって、下がって!!」
プロスペクターの言葉に反応してヘリコプターから離れる将校達。その将校を見下ろしながらヘリコプターは飛び立った。
【艦長たるものたとえどのような時も艦を見捨てる訳にはいきません。そう教えてくれたのはお父様じゃないですか。】
【それにあの船には私の好きな人がいるんです。】
頬を赤らめて言うユリカを前にしてコウイチロウは、
「ユリカーーー!!」絶叫するのであった。
ブリッジで座っていたムネタケのそばにウインドウが開かれる。
そこに映っていたのはユリカであった。
【ブイ。今から帰ります。お迎えよろしく。】
「え!!」
うろたえるムネタケのそばにもうひとつのウインドウが開く。

【こちら格納庫、占拠されました・・エステバリスが・・】
その軍人が倒れる。その代わりに現れたゴートがムネタケに向かって言う。
【観念しろ!!】
「えっ?えっ!えっ!えーーー」
うろたえるムネタケの後頭部にフライパンが左右から振り落ちてきた。
【ホウメイさん、ラピスさん。】
「はっはっは、ちょろいもんさね。」それにラピスは頷き。
「ブイ!」ミナト鍋を頭にかぶってブイサインをするのであった。

「行くぞ。」
電磁カタパルト発射口に立つ  艦長が居ないため、作動しないカタパルト。
「私も結構バカよね。まあ、テンカワさん、位置について、マニュアル発進よーい、ドン。」
アキトの乗る機体が空中に飛び、低空を保ちながら高速で飛び立つ。発進である。
「マニュアル発進ってああいうんだ。」とつぶやいたメグミにルリが振り向く。
「ホントは歩いて発進するんですよ。」
「ふーん、そーなんだ。」メグミは納得するのであった。

飛び出すアキト専用のソラヌム。アキトはプロスに連絡を取る。 
  「プロスさん、今のうちのナデシコに。」
【判りました。】
脇で何かユリカが叫んでいたがプロスはそのユリカの口を閉じていたのであった。
ブリッジにメグミとルリがゴートに抱きかかえながら入室する。
「超特急で到着。」
「ブイ!!」
ブイサインをしながら入室するユリカ。その後ではプロスが疲れたように膝に手をついていながらもブイサイン。
「それでは早速、全速前進。」
その言葉をさえぎるラピス。
「その前に山田ジロウさんが発進許可を求めています。」
「「ヤマダ?」」メグミとミナトが顔を見合わせる。
「ちっがーう!!ダイゴウジガイだ!!」
電磁カタパルトから発進をする空戦フレーム。

「さ〜、準備は万全、行こうか!!」
彼のギブスに巻かれた足はしっかりとテープで固定されていた。
チューリップの上空で触手を簡単に避けながらブレードで切りつけるアキト機その近くをヤマダが接近する。
【諦めるな!!待たせたなテンカワ。】
「別に待ってもいないし諦めても居ないんだが。」
その言葉を無視して空戦フレームは一気にチューリップに接近する。
「ゲキガンウイーング、アーンド、ゲキガンパンチ!!あらよっと」触手を避け、打撃を与えて飛行する空戦フレーム。
「空中でこの空戦フレームにお前のコックピットを合体させる。合体すれば力も倍増のはずだ。掛け声はクロスクラッシュ。
チャンスは一回、俺の足はもうもたない。」
そう言う山田の足にはしっかりとギブスが装備されていた。
「別に俺の機体は飛べるし、やりたくない。」「なに〜!!!」

「ヤマダ機、海底に浸水。」
「それはともかくとしてこちらも負けずに全速前進。」ミナトが振り返って言う。
「やっぱやるの?」
「行きます。」
「グラビティーブラストスタンバイ。」
「了解。グラビティーブラストチャージ。」
ルリのナノマシンパターンが光り、ナデシコの主砲が準備される。
その頃アキトの駆るエステバリスはチューリップ上空を旋回しつつ、
襲い掛かる触手のような物をブレードで切り続けていた。山田は海中で仲良くお魚さんと一緒である。
触手を絶たれたチューリップのゲートにナデシコが入り始める。
(アキト、大丈夫なの?このままジャンプしてしまうとジャンパーじゃない人が死んじゃうよ。)
(大丈夫だ。ラピス。前回もこの展開でジャンプ開始前にグラビティーブラストを発射したからジャンプはしなかったんだ。)
(なるほど。)

チューリップが口に物を一杯詰め込んだリスのようになる。次の瞬間チューリップは
風船のごとく膨れ上がり割れ、ナデシコの勝利は確定した。
空へと飛び立つナデシコ。
「アキトのエステバリスを回収します。」
「あと、ダイゴウジさんも!!」
【ふっ、熱いぜ!!】
そう言う山田の前にウインドウが開く。しかしその端に映るのはぴゅーぴゅーと流れる水。
「山田さん、無駄足だったわね。」
【うるさい!!】
「これが、ナデシコらしいか。」
ラピスはオペレーターシートで頬ずえをしながら言うのであった。


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