第 章  出会い



それは、木星の向こう側からやってきた。


第一次火星会戦

迫り来るチューリップ
「敵はまっすぐに火星に向かっています。大気圏突入後予想到達地点は同南極!!」
ブリッジの最上部に居る一段の中の老人、フクベ・ジンが言う。
「敵の目的が侵略であることは明白である。やつを火星に下ろしてはならん。」
今まで細められたフクベ・ジンの目が開かれる。その瞳には決意の色がにじんでいた。
「各艦射程に入ったら撃ちまくれ!!」
「敵、なおも前進有効射程到達まであと20秒」
 
火星を守護するかのように展開する地球連合宇宙軍の艦隊を前にしてチューリップは血管のようなひびを現すとゲートを開く。
ゲートの向こうには木星と迫ってくる艦隊。
「てぇぇぇぇぇぇ」
それに対して宇宙軍は一斉にビームを発射する。しかし、そのビームはことごとく捻じ曲げられた。
「我がほうのビーム、すべて捻じ曲げられました。」
悔しそうに歯軋りするフクベ。
「ぬう、重力波か。」
「チューリップ内から多数に機動兵器射出」どんどんと出てくる黄色い装甲を持った機械の虫。
「レーザー一斉発射。」

発射されたレーザーはことごとくバッタに跳ね返されてしまう。
「効かない!!」
「チューリップ衛星軌道に侵入!!後60秒で大気圏に突入。」
チューリップ火星南極点に到達大気圏に突入しようとするチューリップ。
そのチューリップに漆黒の矢が突き刺さった。フクベ提督の目が大きく見開かれる。
「重力波反応を確認、敵艦隊の後方からです。」
「当艦に通信が入りました」
「メインスクリーンに出せ。」

「ハッ」
メインスクリーンにウインドウが開かれる。
【今のうちに火星の人の救出を・・】
文字表示だけの信号に対してざわめく艦内。
「何者かは知らん。けれどもこのことを見逃すことは無い。」
「提督、怪しすぎですわ。そんな通信。」
きのこ頭の男、ムネタケ・サダアキが言う。
「しかしこれを見逃すわけには行かない。艦隊を牽引中に火星駐屯軍に救出を要請しろ。」
「了解。」  

チューリップから出された艦隊のはるか後にその戦艦は居た。
剣のようなフォルム、真っ白の純白の剣の側面には双剣のようなユニットが取り付けられていた。
その戦艦のブリッジで桃色の髪を持つ彼女はため息をついていた。彼女にそばに居た同じ服を着た青い髪の女性が後ろから言う。
「ラピス、グラビティーブラストは敵に命中。」
「これで火星での被害者は少なくなったね。アーク。」
頷くアーク。
「はい。後は・・・・」
「後は、アキトだね。」

そう言って遥かかなたにある火星をラピスは眺めた。
その彼女達の居る真っ暗のブリッジの床には時代錯誤の魔法陣が描かれていた。

火星 ユートピアコロニー  

そこには恐怖におびえた人々が集まっていた。
「本部!!」通信からは声が響いてくる。
「至急空港に来たれ。」その応答に安堵する人々。
「了解。市民の皆さん。今すぐ移動します。我々の指示に従ってください。」
軍の人に従い今まで座っていた人やたむろしていた人が立ち上がる。その中には真っ黒の服を着た青年が居た。
「そうか・・・・・・流れは変わった。」
その青年に一人の少女が近づいてきた。
「どうしたの?お兄ちゃん。」

「いや、なんでもないよ。そうだ!君にこれをあげよう。」
そう言って差し出したのはみかんだった。
「ありがとうお兄ちゃん!!」うれしそうに言う少女。
「すみません。」少女の母親が青年に言う。
「いいえ、自分で持ち合わせたものですから。」その青年を少女は見上げて言う。
「お兄ちゃん、今度デートしよう。」驚きながらも微笑む青年。
「デート!!・・・そうだね。デートしよう。」目線を合わせて話す2人。
「私ね、アイって言うの。」

そういったことが行われている近くに居たもう一人の真っ白い服を着て、ローブのようなフードを被っている青年が言う。
「悲しきかな時の流れ。うらむなら流れたときをうらむが良い。」
そういった青年が今まで会話をしていた真っ黒の服を着た青年と話していた少女に近づく。
「やはり来たな!!!」
「守護者か・・・」
対峙する白と黒。
「どうしたの?お兄ちゃん?」
「どいててね。アイちゃん。」
「時の流れが変わってゆく。俺は悲しいよ。」

「お前は誰だ?」不敵な笑みを浮かべる青年。
「お前の・・・片割れさ。」
「片割れ?」
眉をしかめる黒の服を着た青年、テンカワアキト。
「そうだ。しかし、邪魔をするならどいていてもらおう。」
いきなりの攻撃、いっきに懐に入ってくる青年。それをバックステップで回避するアキト。
右足を軸として一気に突進するアキト。それは馬跳びのように跳んで避ける青年。

避けた後、アイのそばに行く青年に対してアキトは構えを取る。
「さらばだ守護者よ。時の流れのままに・・・ジャンプ!!」
青年とアイが青い粒子となって消える。
「ジャンプか・・」
「ねえ、どうしたんです?アイは、アイは何処に行ったんです。」
すがってくるアイの母親。
「判りません。でもいずれ再会できます。だから、今はこの危機を脱することにしましょう。」

アキトの真摯な瞳を見て納得したのかは大きく頷いた。それから・・・・
あるマンションの一室。そこは彼女の住処である。

「ただいま〜っと言っても誰も居ないのよね。」
はいってきたのは深夜のテレビ番組やグラビア雑誌でもお目にかかるかのような肢体を持ちながらも古風な芯の通った女性、ハルカ・ミナトである。
「お帰りなさい。」
「はい、ただい・・・ま・・・」
言葉を失うミナト。なぜならばこの部屋の鍵は管理人と自分しか持っていないからだ。
驚きに固まったミナトを見つめる瞳が暗闇の中にあった。その瞳はあるはずのない金色を纏っていた。

「あなた・・・だれ?」
その問いに答えるかのように一人の少女が姿をあらわした。見に纏っているのは真っ黒のワンピース。
白く、きめの細かい肌。ピンク色の髪に金色の瞳を持った少女。
「はじめまして。ハルカ・ミナトさん。ラピス・ラズリです。」
「で、あなたはどうして私のうちに居るのかしら?」
「ちょっとした小旅行です。」
「小旅行?」
「ハイ。私はいまいち世間体について疎いので教えてもらえる人を探し、こうして来たわけです。」
「そう、で、お家は?」
「ありますが今は無人なのでしばらくここで過ごさせてもらって良いでしょうか?」
首をかしげて問う少女を見てミナトは首をかしげた。
(この子をこのまま外に出して知らない振りをしているのも目覚めが悪いわね。)

結論
「良いわよ。」
明るくいたずらが成功した子供のような笑顔のミナトを見てラピスの顔も明るくなる。
「ありがとうございます。」
そう言ってラピスは深くお辞儀をした。ラピスラズリとハルカミナト、初めての出会いであった。

ネルガル本社

「第一次火星会戦敗退と謎の攻撃によって助けられてから一年あまり。
すでに火星は完全に敵の制圧下、月では現在交戦中。地球も時間の問題に過ぎない。」
ウインドウをバックにして言うプロスペクター。デスクに並んだ役員を前にしてゴーとが口を開く。
「質問があります。」
「なんだねゴート君。」
「要するに私に何をしろと?」
その言葉に反応して毛髪の淋しいめがねを掛けた初老の男性が反応する。
「スキャパレリプロジェクト、聞いたことがあるね。そこで従軍経験のある君を推薦する者が多くてね。」
「私に?それは、軍需計画なのですか?」

それに関しては反応しない役員を無視してプロスペクターが答える。
「まあ、それはともかくとして、今度の職場は女子が多いよ。でボーナスも出るひいふうみいでこれくらい」
そう言ってプロスはゴートに宇宙そろばんを差し出す。
「ひとつ聞いて良いですか?それって、税抜きですか?」
真顔で言うことにしては的外れであった。


ネルガル本社前で話す2人。
「まあ、それはともかくとしてまずは人材が必要だね。」
「人材?」
そう言うゴートに振り返るプロスペクター。
「そう、人材。最高の、多少人格に問題のある。」
街中の電気店。その中でそれは行われていた。バチバチと火花を散らしながら作業を進めるウリバタケ。
その顔には不気味な笑みが浮かんでいた。その後には妻のオリエと彼の息子が居る。
「ねえ、あんた。見つかったら罰が・・」言葉をさえぎるウリバタケ。
「うるせえな。ここをこうすればリリーちゃんは無敵なんだよ。」
と、そこへシャッターが開かれる。現れたのはプロスペクターとゴート・ホーリー。

「はい。ごめんください。」
その2人から今まで作業を行っていたものを隠すように振り替えるウリバタケ。
「え!!?いやっ、これは・・・違うんです。これは・・」
そう言ってうろたえるウリバタケを無視して今まで横たわっていたロボットが動いた。
「こんにちわ。私、リリー。」
そう言うかと思うとロボット「リリー」はいっせいにミサイルを発射した。あたりに爆煙と花火が広がった。
フレームがずれたままの眼鏡をしたウリバタケの目が見開かれる。
「俺をメカニックに!!」
「違法改造屋だが良い腕だ。」
「是非ともうちの・・」
その言葉をウリバタケは人差し指を立てにして口にあてながら精する。
「しししーー」
3人が寄ってひそひそ話を開始する。傍目から見ると少々可笑しく見えるのはご愛嬌である。
「よーし、それでぱっと行こう。」
「しかし、条件面での確認とか契約書が・・」
「いーのいーの。そんなことは同でも良い。俺はこいつから離れられれば地獄でも良い。」

そう言って彼は自らの妻を指した。ほんとに良いのか?この男。
「本気なのかいそんなに社長秘書って嫌なの?」
その問いに対して胸が大きく開かれた服を着た女性、ハルカ・ミナトは言う。
「まあ、充実感かな?」
そう言って元社長秘書である彼女は今まで勤めていた会社を去っていった。
「さあ、戦いましょう。!!」
画面に映る動画。
「よーし、行くぞ。」
「「「おーーーーーー」」」

某アニメーションスタジオで行われている音声の録音。そこに彼女は居た。
「ハイ、OK!!」
「「「お疲れ様でしたーー!!」」」
その3人の中に居た一人の女性に声が掛けられる。
「メグミちゃん、お客さん。ネルガルの人だって。」そこに立っていたのはしかめっ面のゴートであった。
そのゴートに対してメグミは戸惑いながらも軽く会釈した。

ピ・・ピ・・ピと言う一定の音を奏でる計測器、ナノマシンパターンが光るイスのような
装置に座る青いオペレータースーツに身を包む少女。彼女の目の前では両親が驚愕に目を見開いていた。
その先にはプロスの持つスーツケース。その中にはたくさんの金塊が入っていた。

周りを見渡すゴートの視界に瑠璃色の髪の少女が入る。ゆっくりとオペレータースーツを着た少女ホシノルリの瞳が開かれた。
その瞳は人間にあるはずの無い金色であった。その瞳にナノマシンが輝いた。

ミスマル家宅 そこにはひとつの怒声が響き渡った。
「ユリカーーーー!!」
「ユリカ、ほらおじさん怒ってるよ。」
「だってジュン君。この制服ダサダサなんだもん。」
「気にしたってしょうがないよ。」
「ねえジュン君、わざわざ宇宙軍やめてついてきちゃったけど本当に良かったの?」
「ユリカ一人だと心配だから。」
そう言ってジュンは頬を赤く染めて視線を下に向ける。
「さっすがジュン君最高のお友達だね。」その言葉に俯いてしまうジュン。君の未来はどうなることやら?
そのドア前にもう一人の男が現れた。カイゼル髭のミスマルコウイチロウである。
「ユリカ!!開けなさい。」「だって〜!!」「だってじゃありません。いつまでも学生気分で居て!!!」
「お父さん、ダメです。」「ユリカ!!!」「いまユリカは着替え中で・・」

ドアの前で取っ組み合うジュンの努力も空しく、ドアは開いてしまった。
「キャーーーーー!!!」室内を見たジュンは顔を真っ赤にし、
コウイチロウは「ユリカ、立派になったな。」と言った。何処を見ているこの父親?
ゆっくりと渓谷を降りてゆく黒の車を見下ろすミスマルコウイチロウ。
「わが娘、子供と思えばナイスバデ。ユリカ、しっかりお勤め果たせよ。」


ミナト家
「ねえ、ラピラピ?」
料理をしているラピスを見るミナト。
「なに?」
「私ね、今度違うところに就職したの。だからここの家を出て行くの。だからあなたはどうするの?」
それを聞いて首をかしげたラピス。しかし、彼女の手に持たれているフライパンの中ではチャーハンが舞っている。
「私も出ます。そろそろ時期が来たと思っていたから。」
そう言うラピスを見てミナトは微笑む。
「じゃあ、明日でお別れね。」「はい。ミナトさん。」
「今日は最後にパーティーでも開きましょうか?」
いたずらっぽく笑うミナト。そのミナトに笑い返すラピス。
「冷蔵庫の中のを全部使いましょうか。」
「そうね、冷蔵庫も持っていくから。」
それからのパーティーは2人にとって楽しいものとなり、最終的にはお酒も入ってしまっい、
2人は共倒れしてしまい、翌日は二日酔いとなってしまった。

翌日

「ハルカさん、これが我が社の誇る宇宙船。機動戦艦ナデシコです。」

そう誇らしげに言うプロスペクター。目の前には白い船体と突き出した2本のディストーションブレード、
グラビティーブラストの発射口が見える。その姿は・・・
「なんか戦艦らしくないわねぇ」
「まあ、世間体もありますし。名前もなじみやすいものが良いともことで。」
苦笑しながら言い返すプロスペクター。
「ふぅーん」
そのナデシコをミナトは見上げるのであった。
「それにしても大丈夫なの?大気圏で壊れちゃったら大変よ。」
「それは心配には及びません。
このナデシコには木星トカゲと同じ相転移エンジンがあり、ディストーションフィールドを装備してあります。」
「そう言うものかしら?」
「はい。では、艦内をご案内します。」
「は〜い。」
そう言って2人は艦内へとはいっていった。それと入れ違いになるように3人がナデシコの置かれたドッグへと入ってきた。
「これが機動戦艦ナデシコです。」
そう言うスーツ姿のゴートに傍らに居た黒い服で身を固めた青年が視線を向ける。
「ご苦労様でしたゴートさん。」
「これも仕事ですから。」

「はあ、お互いに大変ですね。」「はあ。」
社会人の話をする2人の間に水色のブラウスに黒のベスト、黒のロングスカートを穿いた少女が割り込む。
「それはともかく、早くはいりましょうアキト。」「そうだな。ラピス。」
そう言った2人をつれてゴート、アキト、ラピスの3人はナデシコへと入っていった。
ブリッジにたどり着いたプロスとミナト。既にミナトはナデシコの制服に着替えている。

プロスはそのミナトをつれて左の席にミナトを案内した。
「こちらがメグミ・レイナードさん通信士です。こちらはハルカ・ミナトさん、操舵士です。」
メグミはミナトの前に立つと手を差し伸べた。
「よろしくお願いします。」差し出された手を握るミナト。
「こちらこそ、メグミちゃん。」
更にプロスは移動して中央の2つ並んだイスその片方に手を掛けた。
「そしてこの方がこのナデシコのメインオペレーターのホシノ・ルリさんです。」
その言葉に反応したルリはミナトに振り返る。

「はじめまして。ホシノ・ルリです。」
そう言ってルリはお辞儀をした。そのルリを見たミナトは驚いた。
「ルリ・・・ちゃん?」
ミナトの脳裏に桃色の髪を持った同居人のことがよぎった。
「はい?」不思議そうにミナトを見上げるルリ。
「あっああ、ごめんなさい。知り合いに似た人がいたから。」
「そうですか。」

ルリはその言葉を聞いて興味なさそうにコンソールに向かった。そのとき、ブリッジのドアが開いた。
現れたのはゴートと黒の制服を着たアキトとそのアキトの後に少し隠れたラピスであった。

「ミスター。テンカワをつれてきました。」
「ああ、テンカワさん。」
「プロスペクターさん、今回はお世話になります。」
お辞儀をするアキト。そのアキトに手を振るプロス。
「いえいいえ、わが社にとってもあなた方にとっても利益のあることですからお気にせずに。
なんせ、ノウンで出版された書物はなかなか世間の風当たりが良いですからな。」

ノウンとは書物の発行やプログラミング、それに研究施設を持ち、研究などを行っている企業である。
ある日突然出来て、ここ数年で業績をあげていて、発行される書物はナノマシンや、テラフォーミングを題材に
したものから果ては料理などの物もあり、多くの人に知られている。
「いえいえ、題材にするものはあまりないですから。それと、もう一人連れが居るんですが・・・」
「サブオペレーターの方でしたな。」
「はい、さあラピスプロスさんに挨拶しな。」
言われたラピスはプロスの前に立つ。
「はじめまして。ラピス・ラズリです。」
「ラピラピ!!??」

プロスの前にたったラピスにミナトが近寄る。
「ミナトさん。またお世話になります。」そう言って微笑むラピス。
「そうね。ラピラピ。」
そういったあと思わず2人は抱き合ってしまった。
「おやおや、お二人ともお知り合いでしたか。」
「でも、知り合いが居ることは早く慣れますね。」そう言うアキトの考えに頷くゴート。
「テンカワさん。出航までは後一週間はあります。ゆっくりとしてください。それと3日後には艦長が来ますので。」
「はい。でも艦長がましな方だと良いのですが・・・・」

「心配はご無用。艦長は連合宇宙軍を主席で卒業した秀才です。」
その自信たっぷりのプロスを前にして冷や汗をかいてしまうアキト。
「いえ、そう言うのじゃなくて性格が・・・なんですかで。」その瞬間ブリッジが静かになった。
冷や汗をかきつつ答えるプロス。
「おそらく・・・大丈夫でしょう。」

それから3日後

「ちょっと、それどう言うこと?」キノコ頭のムネタケサダアキが部下を従えてゴートに反論している。
「「ばかばっか」」
「まあ、今の軍人はそう言うやつが多いからね。」
それを尻目に話すルリラピスアキトの3人。
「彼らは各分野でのエキスパート、そして艦長は地球連合連合軍大学の実践シュミレーションで無敗を誇った逸材です。」
「で、その艦長は何処なの?」
「いいえ、それが・・」発言を躊躇するゴートの行動は無駄となった。
「あーーここだよジュン君。こんにちわーー私が艦長のミスマルユリカでーす。ブイ!!」
ブリッジに入ってきた女性、ミスマル・ユリカが盛大にかますブイサイン。
「「「「「ブイ〜?」」」」」そう言う中にはフクベも居た。

「「ばか?」」と言うラピスとルリ。「下らん」切り捨てるように言うアキト。
そのときナデシコに警報が響き渡った。
ブイのことを一旦忘れて作戦ミーティングを開始するブリッジメンバー。
「敵の攻撃は我々の頭上に集中している。」
「敵の狙いはナデシコか。」
「そうと判れば反撃よ。」
「どうやって?」
「ナデシコの体空砲火を真上に向け敵をて下から焼きはらうのよ。」
「上に居る軍人さん達を吹き飛ばすわけ?」今まで静観していたミナトの発言にうろたえるムネタケ。
「そっ、そんなのもう全滅してるわよ。」
「それって非人道的ですよね。」

今まで黙っていたフクベが口を開く。
「艦長は意見はあるかね?」
仁王立ちの状態で言うユリカ。その視線ははっきりとウインドウを捉えていた。
「海底ゲートを抜けて、一旦海中へその後背後より敵を殲滅をします。」
そこへいきなり暑苦しい男ヤマダ・ジロウが現れた。

「そこで俺様の出番さ!!俺様のロボットで発進して敵をひきつける。
その間にナデシコは発進するって寸法だ!っかあ燃えるシュチュエーションだ!!」

そう言って高々に拳を掲げる山田にウリバタケが突っ込む。「オタク骨折中だろ。」
そう、彼の現状は整備員の一人に肩を借りているのだ。
「しまったぁ!!」
とのヤマダの声を無視してルリの声がブリッジに響き渡った。
「おとりなら出てるわ。エレベーターの中に。」

上昇している黒のロボット。それはエステバリスに似ていたが、何かが違った。
そのコックピットの中には黒の制服を着たテンカワアキトの姿が会った。
その彼の前にウインドウが開かれる。
「誰だ?君は?名前と所属を言い給え。」
そのフクベに対して毅然とした態度を取ったまま言い返すアキト。
「テンカワアキト、無所属です。」
「あー俺のゲキガンガー  じゃない。」

「では、テンカワさん、がんばってください。」三つ網のメグミが言う。

「エレベーター、地上に出ます。」

「では、健闘を祈る。」そう言った後ゴートのウインドウは閉じられた。
ガコンという音を立てて停止するエレベーター。コックピット内に映る外部映像。そこには無数のバッタが映し出されていた。
自分の中で何かが高鳴っていくのを感じるアキト。それは破壊の衝動なのか、すべてを守りたいと言う想いなのか、
それは自分でもわからなかった。しかし、今の彼には戦うと言う選択肢しかなかった。
「行くぞ!!」
その言葉と共にエステバリスは飛び上がった。
バッタの密集地帯から脱出してバッタを引き連れながら低空移動するロボット。

アキトは胴体の側面から2振りのブレードを取り出して十字にクロスさせて一振りする。
するとブレードが振られた方向に居たバッタは一斉に爆発を起こした。
それを見たプロスは自分のしていた眼鏡をクイっと掛けなおした。
「ディストーションフィールドによる攻撃ですな。
フィールドを装備しているならあの機体はわが社の物を越しているようにも見えますが。」
「むう。」


「注水八割がた終了。ゲート開く!!」
ゲートが開き、ナデシコを誘うかのように4つの光が発せられる。
「エンジン、良いわよ。」「ナデシコ発進です。」「ナデシコ、発進。」


ランゲージポイントである海へ向かうアキトの機体。その機体は進みながらもバッタを撃退している。
機体は腕をクロスさせ、ブレードを横へとなぎ払って進み、時たま拳で打ち砕いたりもする。
海にたどり着き、行き場を無くしたかのように停止する機体。そのコックピットでバッタを眺めていたアキトに通信が入る。
【跳んでください。ナデシコが浮上します。】
アキトは指示に従い、機体をジャンプさせる。そのジャンプと同時に海中から現れたナデシコのブリッジ上に乗るエステバリス。
それと共にナデシコはグラビティーグラスとを発射した。

「敵残存兵器有効射程内にほとんど入ってる。」
「目標敵まとめて全部撃て!!」
漆黒の矢が突き刺さり、ナデシコの勝利は成された。
「戦況を報告せよ!!」
「グラビティーブラストよる地上軍の被害は甚大だが戦死者は5。」
   「そんな、偶然よ。偶然だわ。」
ヒステリックに叫ぶキノコを無視して話は進む。
「認めざる終えない。よくやった艦長。」
「まさに逸材。」
「はい!!」うれしそうに返事をするユリカであった。
その後では何気なくジュンも胸をはっているのだが彼は活躍していない。

「あの機体の方はどうなっているんでしょう?我々のほうでは聞いていないんですが?」
そのとき、プロスの前にウインドウが表示された。
「ああ、これは社のほうで造ったんで、一応持ってきたんですが?」
そこに移ったのは真っ黒の制服を着たテンカワアキトであった。
「そうでしたか。それでしたら、良いでしょう。本来でしたら持ち物には重量制限があるのですが。
あなたは色々な役職を兼任しますから今回は特例ですよ。」
「はあ、すみません。」

アキトは機体を駆り、ナデシコに着艦した。
「それでは参りましょう!!」「はい!ナデシコ発進!!」
ナデシコ、出航である。





一覧へ