人は生まれたとき泣きます 
人は周りの人を見て自分で知識を得ていきます。
人は色々なことを覚えてゆかないといけないのです。

 第6章はじめて 
1つの研究施設が燃えてゆく。
非道な研究者とかわいそうなマシンチャイルドを道ずれにして・・・・・・・

その光景をブラックサレナのコックピットで見ながら顔を俯けるアキトとアキトに抱きつくラピスと2人、物語は加速してゆく。
アキトは俯いていた顔をあげ、アークにディストーシャンフィールドの展開を命じる。
程なくしてフィーるだが完成したことをアークがリンクを通して報告する。

それを聞いたアキトはジャンプフィールドを発生させ、イメージを開始する。
アキトと桃色の髪を持ち、アキトに抱きついていたラピスの体にナノマシンパターンが浮かび上がってゆく。

「「ジャンプ」」
2人の命令によってサレナはジャンプを開始する。青白い光を残しつつサレナは消えていった。
気づくと俺は虹色の世界に居た。たとえて言うならばチューリップの中と似ている。
以前のように周りを見渡すと桃色の髪を持つラピスラズリが居た。

どういうことだ? 

それは我等が呼んだから  

不意に頭の中に言葉が響く。  

以前もこういった現象にあったことがある。遺跡のナノマシンが投与されたときのことだ。  

お前は何者だ? 

汝らが遺跡と呼ぶ存在。   

遺跡!? 

そうだ。  

その答えを聞いた俺は驚いた。しかし、考えてみると道理であろう。オモイカネは遺跡からサルベージされた存在。
ならば遺跡にも人格があってもおかしくは無い。

遺跡が俺に何の用がある? 

守護をしてもらいたい

守護?

今の俺に残された時間は少ない。その短い間にか?

馬鹿なことを言うな。 

案ずるな、汝とラピスは助け合い、これからは戦わなければならない。

!?ドウイウコトだ?ラピスは関係は無い。  

関係が無いというがしっかりと関係はある。汝がメインの守護者、ラピスがサポートの守護者だ。  
 
どういうことだ?

汝らが認めたとき汝らが望む力の形が現れる。そのときまでに力を貯えよ。  

俺と相対しているラピスは頷く。こんな小さな子が決心をしている。

それに守護というのにも意味がありそうだ・・・・・・・・・・自分を信じよう。

いいだろう。   

そなたらの決心に感謝する。その時まで待たれよ。



目の前が明るくなりはじめる。気づくと俺はコックピットの中に居た。
脇に座らせていた2人のマシンチャイルドが心配そうに俺のことを見上げる。俺は偽りの仮面をかぶり2人に微笑み返す。
「大丈夫だよ。」
そう言うと俺のひざに座っていたラピスが目を覚ます。
この子は俺のサポート役だといっていた。一体どういうことだ?
しかし、そのサポートというのはすぐに分かることとなった。
いつもより回りの様子がはっきりとわかるのだ。
なるほど、五感のサポートか。しかし、頭の中にいきなりそれは響いた。

【それだけじゃない。】
!?これはアークと同じリンク?
【うん】
【そうか、頼む、ラピス。】
【よろしく】

微笑むラピスを見て俺の中で何かが変わる。サポートの意味がわかった俺はサレナから降りることにした。
空気圧の抜ける音と共にサレナの重厚な装甲が開き、中からラピスと2人のマシンチャイルドを伴って降りるアキト、
その顔はすでに「笑い」という名の仮面をかぶっていた。サレナの周りには大勢の整備班が引っ付いておりデータを取っている。

アキトはその中に知っている顔を見つけた。
「ウリバタケさん。」
「おお!久しぶりだなテンカワ。」
「はい。」

アキトはバイザーを外してウリバタケへと近づく。
マシンチャイルド3人組もアキトに続く。

「ウリバタケさん今日は一体何をしに?」
ウリバタケは腕を組みながらに答える。
「サレナの様子見とユーチャリスのことで来たんだ。」
「ユーチャリス、エリナの言ってたプロトタイプナデシコC。」
ウリバタケは引いてしまう。
「おい、テンカワ、いきなりダークになるなよ。」
「もともとこの性格だが?」

アキトにとってのもともとの性格は変わったがウリバタケにとっては以前のアキトの事を知っているのでアキトの変化に少々引いてしまう。
(いきなり変わるからなこいつは)
ウリバタケは苦笑する。

「で、後ろに居るオチビちゃんたちは?」
ウリバタケはアキトのマントの後ろに居たラピス達マシンチャイルド3人組に視線を合わせる。

「今襲撃に行った研究施設につかまっていたマシンチャイルドの子達。北辰ともあったんだが逃してしまった。」
俯くアキト、ウリバタケはそんなアキトの肩をたたく。
「気にするなテンカワ、このオチビちゃんたちを助けられたんだからな。」
そんなウリバタケのねぎらいにアキトは頷くのであった。
「ところで名前は?」
ウリバタケの問いに3人は答える。
「ラピスラズリ。」
「No.132」
「No.137」

それを聞いてウリバタケは天を仰ぐ

「だめだこりゃ、ラピスちゃん以外には名前が無いんだな。テンカワ、あとで名前を付けてあげるんだぞ。」
アキトは静かに頷く。

アキトはそのあとサレナについてアークを交えて討論したあと秘匿ドッグ014を後にした。

ネルガル月ドッグ、その中には事実上では存在しないはずの区間があった。
そここそがアキトが居る場所なのだ。アカツキによって隠匿された場所では日々アキトのための兵器の開発・実験を行っている。

この兵器はネルガルの技術として使われるのでそのことを利用してアカツキは社長派を抑えている。
ネルガル月ドッグ所長室、そこにはネルガルの元会長秘書とネルガル会長が居た。
その中へと4人の客人が現れた。

「会長職はよっぽど暇なようだなアカツキ。」
皮肉をこめながらアキトは話し掛ける。

「何を言うんだいテンカワ君。久しぶりに戦友の顔を身に来たのに。」
しかし、アキトは変わらずに続ける。
「プロトタイプナデシコCの打ち合わせと俺の救出したマシンチャイルドのアークでの適性を調査しにでも来たんだろ。」

そのアキトの対応に驚くアカツキ。
「テンカワ君よく知っていたね。」
「ウリバタケさんが言っていたからな。」
(おやおやそういうことかい。)アカツキは納得する。
「アカツキ、頼みたいことがある。」
アキトは真剣な面持ちでアカツキと対峙する。

「なんだいテンカワ君?」
アカツキは腕を組んだまま答える。
「戦いが終わるまでにユーチャリスの強化と「機動兵器」ブラックサレナとサポート機を作ってもらいたい。」

アカツキ、エリナの2人は驚く。
「ちょっとあなた何を言っているのよ。今のままで十分じゃないの。」
「そうだよテンカワ君、今のままでも十分じゃないか。」

それでもアキトは続ける。
「確かに今のままでも十分かもしれない。けれどもその十分な力を超えるものが現れたりしたらあどうする。」
「確かにそうだな。今のサレナは十分に強いが更なる敵が現れるかもしれん。」
「ウリバタケ君、いつの間に来たんだい?」しかしウリバタケは続ける。
「でもいまさら何故力を欲するんだ?」
「理由はいえない。」
ウリバタケはアキトに近づく。

「テンカワ、バイザーを外せ。」
アキトはウリバタケの指示に従いバイザーを外す。以前とは違い、ラピスと遺跡のナノマシンでリンクして
いることもあってかしっかりと視力は上がっている。少しだけ焦点がはっきりした瞳をウリバタケは見る。

「はははははははははは。いいじゃねえかその案に付き合ってやるよ。」
いきなりのウリバタケの言葉にアカツキもエリナも口をあんぐりとあける。
「何でだい?ウリバタケ君。」
そのアカツキの問いにウリバタケは答える。
「今のテンカワは前のテンカワと何かが違う。俺はその違いに賭ける。」
それを聞くとアカツキも了承した。

そのあとはどのようなものを望んでいるのかなど、どういったものがいるかを検討した。
その中でマシンチャイルド3人組はエリナに出されたオレンジジュースを飲んでいる。
そんな中アカツキはいきなり切り出した。

「ところでテンカワ君、この子達はどうするんだい?」
アカツキはオレンジジュースを飲んでいた3人を見る。

「ラピスは俺のほうで預かる。リンクもしているようだしな。」
「リンク?」
エリナが疑問の声を上げる。

「ああ。俺に投与されたナノマシンと同じ物がラピスにも投与されたらしい。」

アキトは語らない。そのナノマシンが遺跡から採取されたものだということを、
アキトは語らない、そのナノマシンが自分を守護する者と破壊するものに変えたことを・・・・・・

「今までよりは視力もましになっているしな。」
「テンカワ君あとでイネス博士に審査してもらってくれたまえ。後々後遺症が出ると大変だからね。」
「分かった。」
「後ついでにこの子達を預かってくれないかな?」
アカツキはオレンジジュースを飲んでいる3人を見ながら言う。
「なんでだ?いなのシークレットサービスならこの2人の警護は出来るはずだが。」

その答えにアカツキは天を仰ぐ。
「テンカワ君、今、シークレットサービスは奴等についての調査をしている。
暇な人が少ないほうなんだ。そこで最強でもある君にこの子達を預かってほしい。」

確かにアカツキのいう通りなのだ。今現在のシークレットサービスは火星の後継者の密偵などに駆り出されている。
(散々迷惑をかけているな。)アキトは判断を下す。

「いいだろう。けれど服のほうはそちらのほうで手配してくれ。」
「分かったよ。テンカワ君。」

その後マシンチャイルド3人組がジュースを飲み終わるとアキトは3人を連れ自室へと戻った。
3人は部屋に着くと座るところも無く立ち尽くしてしまった。
アキトはベッドに座る。3人もそれに続く。

「3人とも風呂に入ったらドウだ?施設ではシャワーやらはあった
と思うがあったかい風呂に入るといいぞ。」

3人は頷く。アキトは3人をバスルームへとつれてゆく。

3人はオペレータースツを脱ぎ裸になる。白い肌はなんとも美しく成長期後半になったせいもあってか
胸はふっくらとしていた腰にも丸みを帯びている。
アキトが更衣室から出る前に3人は脱いでしまったのでアキトは妖精3人組の色めかしい肢体を見ることになってしまったのだ。
「すまない。今すぐに出る。」

アキトは3人の子とを考えて更衣室から出る。更衣室から出るとインターホンがなりアキトはドアをあける。
そこにいたのはエリナだった。

「テンカワ君、服のほうは私のほうで後から選んで持ってくるから今はこれを着せてあげなさい。」
そう言ってエリナはアキトに長袖の色の違うYシャツにズボンのセットと又違う袋を渡す。
「この袋は?」
アキトはたずねるがエリナは途端に赤くなる。

「あなた・・・・いいえ、なんでもないわ。」
エリナは去っていった。エリナの対応の仕方を不信に思いアキトは袋の中を見てみた。
そこにあるのはひらひらの布。

「・・・・・・・・・・・・」
アキトは少し赤くなる。中のものが一体なんなのかが分かったから。
「これは確かにいるかもしれないな。」
アキトは何故エリナが赤くなったのかが分かる気がした。
【アキト!!!】アキトの頭の中にラピスの声が響く。リンクによる意思会話だ。

アキトはマントをなびかせながらバスルームに向かう。
そこにいたのは浴槽の前で震える妖精3人組。

「どうした。」
アキトはいつもと同じ口調でたずねる。

「「「・・・水・・」」」

「水がどうした?」

「「「怖い。」」」

「え・・・・・・」

普通の人が聞いたら「何を言っているんろう」などと思われてしまうだろうが3人は違う。
つかまっていたときに無理やり培養液に入れられたりしたことがるのだ。

アキトも数回培養液に入れられたことがあるので3人の気持ちが分かった。
アキトの場合は気力である。しかし、ラピスたちは違う。3人には今ま
でのことがあり「水」という存在に恐怖感を抱いてしまうようになっていたのだ。

アキトは3人を優しく抱きしめる。

「大丈夫だ。怖くなんか無い。ここにはやつらはいない。」

アキトの言葉を聞いて徐々に3人の震えは収まっていく。
そのことを確認してアキトはバスルームから退室しようとした。
けれど出ようとしたときアキトのマントが引っ張られる。

アキトは視線を後ろに向けるとマントを引っ張る3人組。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「「「ここにいて」」」
「分かった。」
結局アキトは3人が風呂から出るまで更衣室にいることとなった。

3人がバスルームから出てくる。白い肌がほんのり赤くなりなんとも色めかしい。
アキトは3人んひエリナから受け取った洋服と袋を渡す。
3人はそれを着る。マシンチャイルドとして知識として知っていたらしく3人は難なく着終わる。

その間もアキトは3人から放されなかった。
(きちんと羞恥心を植え付けなくては)アキトはそんなことを考えていた。
マントと戦闘服を脱ぎ、黒の長袖のTシャツ、Gパンの姿となる。
最後にベルトを締めてバイザーとは違う淵なしの丸いサングラスをかける。

彼は食事をとるために食堂に向かう事にした。当然3人も一緒だ。
秘匿ドッグ内ではアキトが真っ黒な服で食堂に行くのは慣れていたがそのアキトがつれていた3人に今日は目が行っていた。

いつもとりで偽りの笑いを浮かべながら食事をとっているアキトが妖精3人を連れてきたのだから
興味を持たないものはいなかった。食堂、アキトにとっての昔を思い出させるもっともいやな場所、いつも彼はここで自分を自嘲する。

しかし、今日ばかりはそういうことも出来なかった。
なんせ3人も子供を預かっているのだ。アキトも3人にしっかりと手を焼く。時間にして地球標準時18:45夕食の時間である。

アキトはラーメンとチキンライス3つを注文した。
3人はイスに座りアキトは3人の前にチキンライスを差し出し、スプーンをそえる。
「さあ食べていいよ。」3人はゆっくりとスプーンを採り食べ始める。

でも3人の持ち方は手をグーにした状態。
3人にとっては今までこういった食事はCレーションで済まされていたからだ。

ラピスは一回ヤマサキとの食事で他の2人よりは幾分かはましだ。
アキトはしっかりと3人にスプーンの持ち方を教えて考えた。
(この調子だと箸もだめだな。)さながら幼稚園の先生といったところだ。

教え終わるとアキトは過去の幸せの象徴で自分のおろかさを再びののしっていたりする。

食事は3人のペースで食べられ、最終的には30分かかった。
その間にもアキトが「ちゃんと噛んでたべよう。」
といったせいもあってかゆっくりなったことを随筆する。

その後はゆっくりとお茶を飲んでいた。
(フクベ提督はこんな気持ちだったのかもしれないな。)お茶が湯飲みの中から消えてゆく、
妖精3人はゆっくり飲んでいる。飲み終わった後3人はアキトにつれられて部屋に戻った。

ベッドは1つ。この前で立ち尽くす3人。
「今日は3人がベッドで寝てくれ。俺は今日は布団でも借りてきて寝るから。」
彼は布団を取りに行くため歩きはじめる。しかし、後ろから引っ張られた。

視線の先には3人の妖精。
「1人はさびしい。」
「私達もさびしい。」
「だから、」

「「「一緒に寝よう。」」」
3人はいたって普通に言う。純粋な優しさ、アキトにとってまぶしいもの。

でも・・・・・・・・・・・・アキトはうれしかった。

「じゃあ、そうさせてもらおう。」結局3人は一緒に寝ることとなった。
1時間後部屋には4人の寝息が聞こえることとなる。


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力、それは人を惑わせるもの

ちから、大切な人を守れるもの

力、すべてのものを破壊することが出来るもの    

人は力を使い色々なことを行う。    

そう、それは守護者達も同じこと
けれど、それを押されるためには・・・・・

第7章 鞘

アキトはドッグ内にある射的場にきていた。すると室内には先客がきていた。

銃声が室内に響く。そこにいたのはを構えるラピスラズリ。
ラピスは本来は唯のオペレーターとして未だ完成していないユーチャリスを操舵すればいいのだが護身用にとパラライザーが渡された。
しかし、その後からラピスはそのパラライザーを返し実弾を撃つ銃を要求した。

これはアキトに自分のことで苦労をかけたくないというラピスの心遣いであった。
華奢な腕から放たれた弾丸は人の形に似せた的へと吸い込まれる。
あたった場所は心臓部、頭、目、腕である。いずれも間隔はあるものの同じ地点を狙っていることが伺える。
また銃声が室内に響く。アキトは片手でリボルバーを構え、撃ったのだ。

弾丸はラピスの狙っていた的にあたる。そこは人間でいうところの心臓部だった。

「ラピス、相手は常に動いてしまうやつだ。この練習だけでは相手は殺せないぞ。」
ラピスも自分が銃を要求したときからすでに人を殺せる覚悟はした・・・・・はず。
しかし、人間は最後で何かにひっかっかってしまう。それが今のラピスの失敗だ。
「ラピス、もしもいやならやめてもいいんだぞ。」

ラピスにアキトからの譲歩案が出される。しかし、ラピスは首を振る。
「そうか、ならがんばるんだぞ。」
その後も室内には銃声が発せられた。

あれから3ヶ月がたった。
その間にアキトは助けたマシンチャイルド、アキトになずけられたヒスイとパールはアカツキに保護を頼み分かれていた。

別れのときはアキトは仮面をかぶらず2人を見送った。
最後には2人はアキトに抱きついて泣いてしまいアキトも少し別れを惜しんだ。
その後はブラックサレナに搭載されていたオモイカネ「アーク」とラピスのオペーレート実験、実験は見事に成功した。

アキトとのリンクもあってアキトの五感は今までよりましになった。
けれども彼の命の炎の勢いは確実に弱まっている。そんな彼にどのようにして守護をしろなどというのはわからない。
事実は未だに遺跡しか知らない。

しかし、時は確実に進んでいる。ユーチャリスの完成は後もう少し、サレナに搭載されていたオモイカネ「アーク」も
ユーチャリスの搭載済み。最近ではウリバタケがハイな状態で「どけどけ」といいながらスパナを振り回している光景が見られるほどだった。

彼はユーチャリスとアキトの要求した機動兵器ブラックサレナ、サレナのサポート機、
最後にナデシコCとユーチャリス強化ユニットも造っているのだ。
(強化案だったのだが追加ユニット状態でユーチャリスに搭載されることとなっている。)

疲れていないのかは謎だが「好きこそものの上手なれ」といったところだろう。
その間にはアキトはラピスに銃の扱い、整備の仕方などを教えていた。

射撃場で銃を打ち続ける2人。そこに通信ウインドウが開く。
「テンカワ、ユーチャリスのほうが完成した。ラピスちゃんを連れてきてくれ。」
アキトはその通信に答える。
「ウリバタケさん、早かったですね。確か完成は1週間後だとエリナさんから聞いていたんですが・・・・・・・」
腕を組みながらウリバタケは続ける。
「なーに、人に不可能は無い!」
偽りの仮面、笑いを絶やさずにアキトは聞いていたのだが汗をかいてしまう。ウリバタケの執念の勝利といえよう。

ユーチャリスドッグそこには純白の戦艦ユーチャリスが在った。
剣のような形のディストーションブレード、ディストーションブレードの和すかな間から見られるハッキング用のセンサー翼、
希望の花言葉を冠された戦艦。
これからたくさんの人に死を振りまく戦艦、そして、守護者達の家ともなる戦艦。
その姿はなんとも芸術的にも美しい。

「ようテンカワ、来たな。」

アキトが振り向くとそこにはナデシコに乗っていたときと同じデザインの服を来たウリバタケがいた。
「ウリバタケさん。ご苦労様でした。」
アキトはねぎらいの言葉をかける。
「いやなに、俺も自分の作りたいように造ったからな。なかなか楽しめたよ。
まあ、ナデシコCの方とユーチャリスの強化案ユニットも出さなきゃだからな。これからも忙しい。」

「おつかれさま。」
ラピスもウリバタケに感謝した。
「おう、ありがとなラピスちゃん。」
ウリバタケはラピスの桃色の髪をなでる。
「早速なんですが艦内を案内してくれませんか。」
「ああ。」
3人はタラップからユーチャリスへと入っていった。艦内はナデシコシリーズと酷似している。
あえて言うなら植物が無いことだ。3人はエレベーターに乗る。エレベーター内は3人が乗ると上昇をはじめる。

「まずはブリッジだ。」

そうやってウリバタケはカードキーをエレベーター内のスロットルに通す。
もちろんアキトとラピスもカードキーはもらっている。
エレベーターから出ると・・・半球状の高い天井、中央のエレベーターシャフトの近くに床の段差で分かれて縦に並ぶイスが2つ、
長時間座っていても大丈夫なように作られたクッション、肘掛の手を置く位置にはIFSコネクタがついている。

「ウリバタケさん、このイスは?」
ウリバタケはエレベーターシャフトに近いほうのイスに手をかける。
「このイスが艦長席、一応お前の席だ。前のほうのがラピスちゃんのオペレーター席だ。
オペレーター用の席はもう1つあるからあとで案内する。ともかく2人とも座ってくれ。」

アキトとラピスはウリバタケに言われた席に座る。
「テンカワ、戦闘態勢というんだ。」
アキトは頷き、「戦闘態勢。」すると、オペレーター席と艦長席がエレベーターシャフトを中心にして床ごと上昇をはじめる。
オペレーター席は1メートル上がって上昇が止まる。艦長席はさらに2メートル上がりとまる。

「この体制で戦闘を行える。ラピスちゃんとのリンクでのハッキングも可能だ。」

そういいながらドームの柱の1つについている箱を空け、ウリバタケは中のボタンを押す。
すると床が円に開き下からイスが出てくる。ウリバタケはそのイスに座る。
「艦長席、オペレーター席、あと他にイスが5つ格納されている。まあ、使うことは無いと思うがな。
それとブリッジは第一、第二がある。ここが第一で反対側のほうにもある。ラピスちゃん、外の様子を出してくれ。」

「分かった。」
ラピスの体に一瞬だがナノマシンの発光するパターンが現れる。
するとドーム全体にウインドウが展開され、外の様子が映し出される。

「このシステムはナデシコCにも採用される予定だ。こうやって見ると壮観だぞ。」
確かに風景が全体に広がりなかなか壮観である。
「でもまだまだ艦内に案内するところがある。次に行くぞ。」
次は格納庫、そこにはアキトのブラックサレナ、予備用のエステバリスカスタムが並んでいる。

「真ん中にブラックサレナを配置する予定だ。予備のユニットとかはコンテナ倉庫にある。
テンカワ、お前がこれを整備するんだ。しっかり覚えてくれ。」

「ああ。追加装甲のほうは覚えている。これからも説明を頼む。」
ウリバタケは手をグーにして親指だけを立てる。
「もちろんだ。」

それからはコンテナ倉庫に案内されたりした。次に通されたのは生活ブロック。
「ここにはお前の部屋とラピスちゃんの部屋、あと余分に個室が3つある。個人用に台所、風呂場が各部屋についているからな。」

個人の部屋に入る二人、アキトの部屋にはベッド、テーブルにイス、クローゼット、カウンターつきのキッチンがついている。
もちろんバスルーム、トイレも完備されている。アキトの部屋にはウリバタケも入ってくる。

「結構いい部屋だぞ。ホテルみたいな感じがするがな。これからお前で自分の部屋に変えていけ。」
アキトは頷く。ラピスがそんな中部屋に入ってくる。手に植木蜂を持って・・・

「アキト、これがあった。」
それを見てウリバタケが答える。
「それはイネスさんの贈り物だ。何かしら彩りがあったほうがいいっていってな。」
「ラピス、ちゃんと水をやるんだぞ。」
「うん。」

それからは艦内の構造をアキトの部屋でウリバタケは説明した。アキトとウリバタケはイスに座って話し合っている。
ラピスは館内の構造は「アーク」に聞く。といってアキトのベッドに座っている。

「テンカワ、お前の言っていたサレナのほうの完成はまだかかる。
ユーチャリスの強化ユニットのほうはデータの収集が始まってからナデシコCと同時並行でやる。それでいいな。」
「ああ。」

「じゃあ俺はナデシコCのほうに言ってくる。あのキザ野郎が俺を技術部の主要メンバーに入れやがったんでな。」
「がんばってくれ。」
アキトのねぎらいの言葉に驚いたウリバタケ、しかし、表情はいつものように戻ってゆく。
「分かってるよ。」
ウリバタケはそう言ってユーチャリスを後にした。
ユーチャリスに残ったアキトとラピスはドッグにあった部屋から艦内に荷物を移し変えた。
2人とも荷物は少なく、服、銃、そしてアキトの元を離れてゆく際にパール、ヒスイ、ラピス、アキトの4人で取っ
た写真が入ったフォトフレーム。それを整理し終わって2人はイスに座って休んでいた。

「ラピス、今日は疲れた。早く寝よう。」

こくんラピスも銃の練習をしていたので賛成する。
アキトは戦闘服の手首についている腕輪のスイッチを押して戦闘服を構成していた
ナノマシンを腕輪に戻すとバスルームに向かう。ラピスもアキトに続いて入ろうとする。
しかし、
「ラピス、お前は自分の部屋で入れ。」

ラピスは途端に涙目になる。ラピスは1人で入れるようになったのだがこういうときに甘えてしまう癖がある。

「分かったからそこで待っていろ。」
結局アキトはラピスがシャワーを終わらせるまでラピスのそばにいることとなってしまった。
その後もラピスの涙目攻撃によって寝るときも一緒のベッドで寝ることとなった。


そして、ユーチャリスは就航した。

2201年7月 1日 スペースコロニーマガタマ 襲撃  結果  大破
2201年7月10日 スペースコロニーホスセリ 襲撃  結果  中破
2201年7月20日 スペースコロニーウワツツ 襲撃  結果  中破 


そして、2201年8月1日スペースコロニーシラヒメ 

【アキト、行ってらっしゃい。】
ラピスからのリンクでの会話。それは戦いへ赴くアキトへのねぎらい。アキトはそれに答えるかのようにジャンプをする。

今までアキトとラピスは3つのコロニーを襲撃した。しかし、3つともすでに研究施設は崩壊、
つかまっていた人も殺されていてアキトがブラックサレナで隔壁を破って侵入したと同時に爆発、
それに巻き込まれて関係の無い人が死んでゆく。

しかし、アキトの心は変わらない。研究者達からのつかまった人の救出、それこそがアキトの目的、
そのためにはアキトは完全なる死神へとなっていた。

追撃部隊の艦隊を振り切るブラックサレナ。しかしなお恐怖しながらブラックサレナに砲撃をする
ステルンクーゲルをブラックサレナは高機動ユニットを排除しながら体当たりをして
たくさんのパイロット達の死と引きかえにブラックサレナは研究ブロックの隔壁を破り侵入する。

そこに在ったのは血で床をぬらしながら倒れている研究者達と散乱したファイル。
そして、中央には三角の陣形を組みながらブラックサレナに視線を送る編み笠の男達。

「遅かりし復讐人、未熟者よ。・・・滅」

編み笠の男、北辰が言う。次の瞬間奴等北辰たちはジャンプをして消えた。
爆発、コロニー全体に仕掛けられた爆薬が炸裂する。

強力なディストーシャンフィールドに守られているブラックサレナにも衝撃が来る。
アキトはここから離脱するためイメージを開始する。

「ジャンプ。」

次の瞬間、その場所は炎に包まれた。ジャンプアウト、目の前にあるのは炎上するシラヒメ。
アキトはその姿を見つめる。ウインドウ通信で近くに戦艦がいることを知る。

地球連合宇宙軍第三艦隊所属『アマリリス』
(ジュンが艦長をしている船だったな。アカツキ、謀ったな。)
アキトはシートに背を任せながら考える。体は先ほどの戦闘で高揚している精神を整えアキトはイメージを開始する。
「ジャンプ」
ボソンの光を残しながら消えるブラックサレナ。
次にブラックサレナがジャンプアウトしたのは『ユーチャリス』の格納庫。アキトはサレナから出るとブリッジへ向かう。

ブリッジにはアキトの帰りを待っていたラピスがいた。
「ラピスデータの転送。終わり次第呼んでくれ。」

そういうなりアキトは艦長席に座る。
ラピスは強襲の結果、ブラックサレナのデータ、ユーチャリスの航行記録をネルガル月ドッグに送る。
「終わったよ。アキト。」
アキトは何も言わずに頷く。

「ラピス、休憩だ。光学迷彩を展開して自動航行モードへ移行目的地は報告書にあったコロニーのアマテラス。」
「了解。」
ラピスは自動航行モードに変えると戦闘態勢が解除された艦長席に向かう。
「アキト、大丈夫?」
「何がだ?」
「今のアキト、とっても怒っている。」 「確かにそうかもしれない。でも大丈夫だ。」

アキトはそう答えながらラピスの髪を優しく梳く。ユーチャリスは今日も漆黒の海を旅している。

アキトとラピスの前にアークからのウインドウが開く。
[ネルガルからの通信です]

「出してくれ。」
するとドームの中央にウインドウが開く。
「いや〜テンカワ君、立て続けにご苦労様。」
ネルガルの会長アカツキだ。
「どうってことは無い。戦闘が終わってもユーチャリスで休めるからな。ラピスも料理がうまくなっている。」
「そうかい。エリナ君も喜ぶと思うよ。」

ラピスはエリナに料理を教えてもらったことがある。そのことによってラピスは料理ということに興味を持ちはじめ、
たまにオペレーター席でウインドウを開いてレシピを見ているラピスの姿が見られることがある。
出来たものは昼食などに出され、更にどうすればいいのかを審議している。

「それで、次にアマテラスに向かっているのだが。」
「どうやら君のことがアオイ君に見られたらしい。最近じゃあ幽霊ロボットだってさ。」
「そのことならネットに流れていて知っている。」
「そうかい。しかも、宇宙軍がアマテラスにナデシコBを派遣するそうだよ。」
「ルリちゃんか。」
アカツキが神妙な面持ちで続ける。
「テンカワ君・・・・・」
「大丈夫だ。おそらく今まで派手に破壊活動をしてきたから奴等もあせり始めているだろう。」
「ナデシコCのほうも最終チェックに入っている。
おまけに君が強化ユニットを所望したおかげで社長勢のほうがうるさくってね。」

アカツキは苦笑する。
「それはすまなかった。」
「いやいや、いいんだよ。最終決戦も近い。がんばってくれたまえ。」
「ああ。」

会話が終わるとウインドウが消える。アキトはシートに体を任せ息をつく。
(最終決戦か。)

それからも頻繁に来るアカツキとの連絡とそのミーティングによってナデシコB入航時に襲撃することが決定した。
【巻き込まないようにしていたのに巻き込んでしまった。俺はなんて無力なんだ。】
しかし、アキトの想いをわかっている者もいる。 【そんなこと無い。】
【ラピス】
【アキトはがんばっている。力もある。でも、それでも足りないなら私が力になるし、鞘にもなる。】
アキトの中に暖かいものが芽生える。
【そうだな。ラピス、そのときが来たら頼むぞ。】
【うん!!】
ユーチャリスは漆黒の宇宙を今日も行く。

新規HTML加工日記
未熟文、直したくなるけど、なおさない。誤字もあるね。

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