第4章  待つ者
コポコポ
コポコポ

薄暗い部屋の中、そこには培養液が入ったタンクがあった。
その中には桃色の髪を液体の中で揺らす少女の姿があった。

私の世界は培養タンクから見る世界だけだった。
けれども、私は他の世界を見ることとなった。

私を閉じ込めていた科学者の死によって。私は拉致された。場所はわからない。そもそも、前居た場所も知らない。

つれてこられたのは前と似た部屋。私がこれからどうなってゆくのかはわからない。
けれど、私は唯、流されるだけなのだろう。

今日も検査が行われる。前に居たところよりひどく、痛い。
この人たちは私のことを人間だなんて思っていないのだろう。

私はもういやだ。こんな小さな世界ではなく、もっと広い世界を一度でもいいから見てみたい。
そんなラピスの想いを無視して今日も科学者が部屋の中に入ってくる。その中にはラピスの知らない科学者がいた。

「はい。こんにちわ、ラピスラズリさん。私は今回、出張してきたヤマサキです。聞こえてますか?」
ヤマサキは耳に手を当てながら聞いてきた。ラピスは一応頷いた。

「今日はあなたに偉大なる実験に携わっていただきます。」
そう言うと、ラピスのいたタンクから培養液が放水される。

私は久しぶりにこの中から出された。私がこの部屋を出されるのは今まで無かった。
けれども、ラピスはこの先にも痛いことが待っていると容易に想像できた。
従わなければどうなるのか分からないことも分かっていた。ラピスは、流されるだけの人形と化していた。

ラピスはひとつの部屋に連れてこられてた。ラピスはヤマサキによってイスに拘束される。
折れてしまいそうなほどに白く、細い腕にベルトがかかり、ラピスを拘束する。
「ヤマサキ博士」
ヤマサキの後ろに編み笠の北辰の部下がやってきてヤマサキに耳打ちをした。

「フムフム。分かりました。」
ヤマサキはラピスに振り向き、笑ったまま話し掛ける。

「ラピスさん、あなたは忙しくなりそうですよ。あなたのほかにもう一人このナノマシンを投与した人がいたのですが、
その人がいた研究施設に、何者かが強襲されたそうです。いやぁ私も危なかったかもしれませんね。」
ヤマサキは口ではそんなことを言っているのだがあまり危機感の感じられない口調で言う。
この男はまさにつかみの無い男と言えよう。
「でははじめますよ。」
ヤマサキはそういうかと思うと、白衣の中からひとつのアンプルを取り出す。

「実はこのアンプルの中身はもう一人、テンカワアキト君に投与したものなのですが、
採取できたのが2人分しかなかったのですが、これで失敗したらプラン3の遺跡との融合ですね。」

ヤマサキはそういいながらラピスの白く、細い、華奢な腕にアンプルをあてがう。
「は〜い。いきますよ〜。」
そういいながらヤマサキはラピスにナノマシンを投与した。

私の中にナノマシンが投与される。実験で投与されろことが無いので少し痛い。
でも、私は驚いた。
急に目の前が暗くなる。
暗い闇、不意に頭の中に何かが入ってくる。

補助せよ。彼を補助せよ。

だれ?あなたは誰?私は尋ねる。けれども、答えは返ってこない。

悲しみを背負いし者、守護をする者 汝は彼を補助せよ。 

さすれば彼は汝の存在意義となり、汝は彼の存在意義となる。     

汝に問う、彼を、助けられるか? 

よく分からない?私は頭をかしげた。
暗闇の中で頭を傾げる私がおかしいのかもしれないけれども向こうは分かっているようだ。   

汝の答えを待つ。

そういったとたん、周りが明るくなった。そこで私は気づく。そこは元居た場所だった。今のは一体なんだったのだろう?
きょとんとしているラピスにヤマサキが話し掛ける。
「どうでしたか?テンカワ君とは違う反応でしたが・・・」
「ワカラナイ。頭ニ声ガ聞コエタ。」
「声?ですか?よく分かりませんね。」

そういってヤマサキはラピスを拘束していたベルトを外す。

「ではラピスさん、あなたにはこれからはオペレートを行っていただきます。では、早速行きますよ。北辰さん、お願いします。」
すると北辰はラピスの細い腕に手錠をかける。
「年頃の娘さんの肌に傷をつけてはいけませんよ。」

ヤマサキが茶々を入れるが北辰はそれを気にも留めない。
北辰、ヤマサキ、ラピスの三人は格納庫のようなところへとやってきた。そこに居るのは赤い機動兵器、夜天光。
そして、夜天光をたたえるかのように円陣を組む機動兵器、六連、ヤマサキは六連の中の一機に搭乗する。

ラピスは北辰に拘束されたまま夜天光に搭乗する。2機は離陸を開始して、小型のチューリップゲートに近づく。
チューリップゲートの内側から虹色の光が広がる。その中へと、2機は入っていくのであった。
虹色の光が途切れる。気づくとそこは格納庫だった。驚く私を無視して北辰と呼ばれた男は私の手錠をもって機体の中からでる。
手錠をもたれている私も機体から出る。

「はい、到着♪でも、今日はこれで終わりです。ラピスさんは今日は休んでください。」

ヤマサキは結構気楽そうにラピスに言った。
「明日は色々と忙しいので今日は英気を養ってくださいね。」
そう言ってラピスは部屋へと通された。その部屋は今までの檻のついた部屋ではなく、診察用に使われていそうなベッド、
パイプイス、丸い、テーブル。一般人の根から見れば少し粗末に見えるかもしれないけれどもラピスにとってはそこがよく見えた。

それは彼女が今まで暮らしていた場所の悪さのせいであろう。
結局、この日は何も無かった。ラピスは、ベッドの中で、少し考え事をした。それは、頭の中に聞こえた声のこと、
「彼」とは誰のことなのか、しかし、その答えは出るはずも無くラピスは寝るのであった。


ラピスは自分にあてがわれた部屋のベッドの中で目覚めた。室内は、暗いままなのでラピスは電気をつける。
程なくして、ヤマサキがやってきた。
「おはようございます、ラピスさん、今日はあなたは忙しくなりますから、しっかり栄養をとりましょう!!!」

そう言ってヤマサキは運んできたワゴンから、トレイに乗った朝食をテーブルの上に載せる。
「もちろん、私もご一緒しますよ。」
ラピスが気づくと、昨日見たときには1つしかなかったパイプイスがいつのまにか2つになっていた。
ラピスはなんでだろう?とも考えたのだが。自分はつかまっているし、考えても仕方がないと思った。

トレイに乗っていた朝食は、コッペパンが2つ、焼きそば、蒸しウインナー、とうもろこしスープ、牛乳、
青りんごゼリーである。気のせいか給食っぽいような気がする人が居るかもしれないけれどラピスは学校に行った
ことも無いのでそういうことはわからない。
「小さいころが懐かしいですね。ああ、かえるの解剖もやりました。」

ヤマサキは昔をしのんでいた。朝食を食べ終わるとラピスは、広い、ホールのようなところへとつれてこられた。
そこにはたくさんの計測機械、研究者、そして、護衛についている火星の後継者の服を着ている男たち、
彼らの視線はひとつのモノへと注がれていた。
それは、立方体、黒味がかかった金色、ナノマシンパターンのような模様。

そう、それこそがボソンジャンプのブラックボックス、火星会戦の原因、
最終的には宇宙のかなたへとナデシコによって流されたはずの、在ってはならないもの。

ボソンジャンプの演算ユニットである。
(いつ見ても、好奇心が沸いてきますね。これがどうやった演算するのか考えるだけでも、一生かかりそうです。
おや?ラピスさんも初めて見たせいもあって驚いていますね。)

ラピスの視線演算ユニットへと注がれていた。
(私はこれを初めて見たはずだ。けれども、見たことがあるような気がする。どうして???????)
ラピスの疑問をよそに、ヤマサキはラピスをつれて演算ユニットへと向かった。

そこに在るのは。色々なコードが延びたイス、手をおくところにはしっかりとIFSコントロールパネルが設置されている。
ラピスはそこに座らせられた。
「さあ、イメージしてください。遺跡の内部を、コントロールの仕方を探してください。」
そう言うヤマサキを尻目にラピスは演算を開始する。そして、ラピスの意識はなくなってしまった。

真っ暗。

ラピスは真っ暗な空間に1人浮かんでいた。
首をかしげるラピス。そんなラピスの頭の中に声が響いてくる。


おお、汝か 

あなたは誰?

遺跡、遺跡とばれている存在  
 
あなたは何を話したいの?  

汝にはやってもらいたいことがある。

 何?  

我々の守護

どうして? 

それは、定められしこと 
  私のほかにも居るの?  

汝はサポートタイプの守護者であって、メインの守護者が居る。   

その人はどんな人? 

悲しみを知る者、命の大切さを知る者、冷酷に人を消せる者。 

その人とはいつ会えるの?  

それは、時の流れの導きによって会える

それまでは汝は孤独に耐えるのだ。   

分かった。  

 汝とメインの守護者がその責務を認めしとき、証が現れる。

その形はその者の力の具現。その者が来るまで待つがよい。

分かった。 


会話?が終わると真っ暗だった空間が明るくなり始める。ラピスは、その光を見上げた。気がつくと、元居た部屋だった。
「ラピスさん、何かわかりましたか?なんかオペレート開始と同時に意識が無くなっていたのですが・・・・」

フルフル

ラピスは桃色の髪を振り回して否定した。
「はあ、プラン2はジ・エンドですね。最後のプラン3をはじめますか。ラピスさん、ご苦労様でした。
これであなたは前に居た研究所に戻っていただきます。」
そう言うとヤマサキは出て行き、ヤマサキとは入れ違いに北辰がやってきた。
「ラピスよ、我と共に来て貰おう。」
そう言うと北辰は手早くラピスを手錠で拘束して、部屋から出た。
ラピスは、この出来事によって自分が何をすればいいのか、これから自分はそのメインの守護者会ってみたいと思った。

そのあとは、来た時と同じように夜天光に乗せられ、チューリップゲートで前の研究所にラピスは戻された。

研究所につくとラピスはもう一度研究室で検査の生活を過ごした。
変わったことといえば何故か北辰がラピスの検査に立ち会っているというころだ。
余談ではあるがラピスは北辰に見られながら検査されるときは必ず
寒気がしてIFSパネルにつめを立てながら検査を受けたとか。


NEXT to 5

2人は出会うこととなる。

2人は戦うこととなる。誰に言われたわけでもない。

誰に頼まれたわけでもない。

なぜならば 

それは本人たちにも分かっていない

だからこそ・・・・・

第5章  出会い

クリムゾングループの所有する研究所内に赤い警報ランプが灯る。
ウーウーという警告のサイレンも鳴り響き、研究所で働いていた研究者たちは慌てふためき、何が起こったのかと思う。

けれども彼らにも何故ここの研究施設が襲撃されたのか大体の理由は分かっていた。
彼らは自分が何をしているのか知っていたから、それが犯罪行為だということも知っていたから、
彼らは火星の後継者の研究員なのだ。

数ある研究の中で彼らの研究内容は火星の後継者内部でもボソンジャンプに関連する重要なものだった。
その内容はマシンチャイルド。v
ネルガルによって開拓された新たなる技術。人の可能性、遺伝子操作、遺跡という名のテクノロジーより
サルベージされた技術を応用して作られたコンピュータ操作に特化した子供たち。マシンチャイルド。
その子供たちはオモイカネというスーパーコンピューターと会話することのできる子、人々の中にはその会話、
演算を行うときに見られる発光そるナノマシンパターンの様子を見て彼らを妖精とたとえる人も居た。

もっとも有名なのはナデシコのオペレーターとして活躍したホシノ・ルリであろう。
しかしそれは表の話。光と闇 物事には相反する物があるのが必然である。
この研究施設の研究者たちはもともとはネルガルで研究をしていた過激派の研究者たちである。

彼らは根っからの研究者であった。たとえ被験者が人間で得あっても彼らは被
験者を人間とは見ないでモルモットとして見ていた。

ネルガルの会長がアカツキに変わると非人道的な実験は出来ずらくなっていった。

最終的には彼らは解雇させられることとなった。しかし、何故そんな研究者がクリムゾンの研究施設に居るのか、
何故人権を無視した研究が許されているのか、彼らは犯罪を手伝っていたから、火星の後継者と呼ばれる者達の新たなる
秩序で作られた世界の創造のため。そして、自分たちの好奇心のため・・・・

慌てふためく研究所の一室の天井が破られる。

そこから現れるのは1機の機動兵器、黒いパーソナルカラー、そして、肩に装備された赤とピンクを混ぜたかのような色で
描かれたデフォルメされた黒百合、それはこの機体名を現していた。「ブラックサレナ」恋と呪いの2つの相反する意
味を持つ死神、両手の変わりに装備されたハンドガン。ハッキングにも使用できる人
間には無い尻尾のようなテールバインダー多くの犠牲者たちの弔いの復讐。

それこそがブラックサレナの役目でもあり、サレナの主でもあるアキトの想いなのだ。

ブラックサレナの頑丈そうな装甲の一部が開く、出てきたのはネルガルで採用されているアサルトピットの装甲、
そして、その中からアキトは飛び立った。

身にまとうは闇に紛れすべてを飲み込むかのような黒のマント、視覚補助用のバイザー、闇の中に居れば目の悪い人ならば
誰も居ないだろうというような格好。

アキトは完全な復讐人となっていた。

アキトはサレナから出ると、室内に居た研究者たちにリボルバーの銃口を向け、引き金を引く。
グチャっと言うなまめかしい音と共に研究者たちが倒れる。

アキトは倒れた肉を無視して室内に在った端末に自分の持っていた携帯端末を接続する。
そして、アキトは自分に投与されたオペレーター用ナノマシンを使い施設内の構造を探るために
メインコンピューターに接続する。いくつかのセキュリティープログラムはアキトによってことごとく撃破され、
アキトは施設内のデータを保存すると、ハッキングをやめラピスラズリを確保することにした。

昔の彼にはできなかったこと、今の彼にできること、今彼にできることはつかまった人を助けること、
それが彼の「自分を信じる」に当てはまっていた。

彼は程なくして1つのドアの前にたどり着いた。

「おかしいな。」

アキトはバイザーの下で眉をしかめた。
今まで襲撃した施設では何かしらの警備システムが働き、火星の後継者が必ず出てきた。
けれどもこの施設は違った。確かに警備システムは働いているのだが人が一人も現れない。
そんなことを考えたアキトだったがラピスラズリのことを考え、急ぐことにした。

携帯端末をドアの端末につなげ、先ほどのようにハッキングを開始する。
ハッキング開始から1分もかからないうちにドアは開いた。その中には恐るべき光景が広がっていた。

たくさんの鉄格子がついた部屋があり、いつの部屋に必ずマシンチャイルドが居た。
居ては成らない存在である彼らが居る。アキトは報告にあったマシンチャイルドは
ラピスラズリだけと聞いていたので少なからずとも驚いたが部屋の中に入る。

そして、目的を目的を果たすことにした。

「ラピスラズリはどこだい?ここに居るはずなんだけど。」
偽りの笑いの仮面をかぶりアキトは銀色の髪を持つのマシンチャイルドに尋ねる。

最初はびくびくしていたのだがアキトの優しい声を聞いて安心したのか答え始める。
「1人だけ・・・・奥の部屋に・・・・連れて行かれた。」
その小さな答えを聞くとアキトは奥の部屋に向かった。
ガチャッ

「久しぶりだな、テンカワアキト。」
編み笠の男がいた。
【こいつは、北辰!!!!!】
アキトの感情に反応してナノマシンが発光をはじめる。
「北辰、久しぶりだな。」
「うむ。貴様が救出されたことは知っていたが、本来動けぬはずの体を使い、我等の研究施設を破壊して回っていると聞いて驚いたぞ。」

クククと笑いながら答える北辰。

「しかし、面白い。あそこまで軟弱だった汝がここまで我を追い詰めるものとなるとはな。そこで今日からは復讐人と呼ばせてもらおう。」

そう言うと北辰はアキトに向かって攻撃を開始した。
懐刀がアキトののど元へと放たれる。アキトはその刀を避け、マントの中からリボルバーを取り出し至近距離で発砲する。
【殺った。】
そう思った矢先北辰は身を翻して弾を避けた。
戦いはさらに激化してゆく。

周りのことを無視した戦い、そのせいもあってか室内の隔壁に弾痕や刀傷ができた。
息を一定に保ちながら戦うアキトに対して北辰は未だに笑いを浮かべて言う
「楽しいぞ。テンカワアキト、しかし、残念でならない。」
「どういうことだ?」
裏拳を放ちながらにアキトは問い詰める。
「こういうことだ。」
北辰は羽織っていたマントの中から何かを取り出す。それは

「爆弾!?」
「さらばだ、復讐人。」

そう言うと北辰は天井を破って現れた夜天光に乗り、去っていった。

残された爆弾。これにはアキトは困った。いくら各分野のプロから技術を教えられたアキトでは
あったがさすがに爆弾の作り方、解除の仕方は教えられていない。

この状況でアキトはラピスラズリの救出を優先することにした。

今まで居た部屋のさらに奥に部屋があることにアキトは気づき、室内に入る。
そこに居るのは桜色の髪を診察用に使われるベッドに広げ、金色の瞳は閉じられている。
そして、華奢な肢体はオペレートスーツに包まれている。

その光景なんとも美しかった。
アキトのナノマシンがうずき始める。
【なんだ!?これは】

アキトの頭の中に何かのイメージが入ってくる。
それはなんともいえない光、金?青?赤?唯一たとえられるならば虹色。
しかしアキトには何故虹色の光が頭によぎったのかということを考える暇が無かった。

アキトはラピスをお姫様抱っこ状態にして連れ出した。
爆弾のタイマーはすでに3分を切っている。
【このままではまずいな。】
アキトはリンク居ているブラックサレナ搭載のオモイカネ「アーク」に呼びかける。
【アーク、このままでは爆発に巻き込まれてしまう。来てくれ。】
【了解】

そのリンクしている間にラピスが目を覚ます。
【誰?この人。真っ黒な格好、怪しい。でも懐かしいような気がする。
そうか!この人が私のパートナー、私が助ける人、暗闇の中で話した遺跡が言っていた人。
まだ証は出ていない。けれども私はわかる。この人が、私のパートナーだ。】

ラピスはアキトに抱きついた。華奢な腕の力を総動員してラピスはアキトに抱きついた。
(この子を助けたい)アキトの脳裏にそんな想いが浮かんでくる。アキトは鉄格子がついて居る部屋が並んだ通路へと戻ってきた。
そして、そこに居ると天井が破壊され一体の機動兵器が現れる。アキトの駆るブラックサレナだ。
爆弾のタイムリミットはもうすでに2分を切っている。

アキトは周りを見回す。壁を見つめて居る子、うつむいたままの子。
アキトはこの部屋に居たマシンチャイルドたちを助けたかった。
アキトはブラックサレナにラピスを乗せるとマントの下からリボルバーを取り出し、鉄格子の電子ロックに銃口を押し当て、
引き金を引く、アキトの手に衝撃が走るがアキトは気にせずに中へ入り茶色の髪を持つ子を連れ出し、ブラックサレナのコックピットの床に乗せる。

そして、先ほどラピスの所在を尋ねた子が居る鉄格子の電子ロックも破壊してその子もさっきの子と反対側に乗せる。
タイムリミットはすでに30秒を切っている。

アキトは危険だと考えサレナに乗りアサルトピットを閉じる。
最初に乗っていたラピスはアキトのひざの上に乗る。アキトは3人が安全な位置
に居ることを確認するとサレナのディストーションフィールドを展開させた。

アキトの前に表示された拡大映像のウインドウの中に残されたマシンチャイルドが映る。
アキトはそれを無視するように瞳を閉じ、イメージを開始する。
「ジャンプ」
次の瞬間、研究施設はこの世から消えた。
その中に居た大勢の外道な研究者とかわいそうなマシンチャイルドを残して・・・・・・


コックピットでアキトは無表情に延焼してゆく研究施設を眺めていた。
【又、助けられなかった。】
俯くアキト、そのアキトのひざに座っていたラピスがアキトを抱きしめる。
「大丈夫。」
小さな声だが、その言葉はアキトにとってうれしい言葉だった。
「すまない。」

アキトの横に座っていた2人もアキトにすがりつく。
【これ以上の犠牲者は増やしたくない。こんなことはあの子達だけでたくさんだ。あいつを許さない。】
アキトは戦いを続ける。
たとえそれが犯罪であっても 虐殺者といわれようとも アキトは、自分を信じて戦う。

NEXT to 6


新規あとがき
やっぱり初期作品、一人称と三人称が混ざってますね。書きたいことは今と同じなので、なおさら自分の未熟さを再発見。うう、
ここまで読んでくださった方、お付き合い、ありがとうございました。
また、TOPなどでWEB拍手をいただけると作者は嬉しいです。

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